鬼系上司は甘えたがり。
 
そのぶん、広告を載せるためのスペースにお支払い頂く掲載料金は少なくて済み、もし仮にフリーペーパーを見てお店を訪れた人が当初の見込みより少なかった場合でも、それほど大きな損益にはなりにくいのが利点だったりする。

のだけど。


「それは……そうかもしれませんけど、私の大切なお客さんを“チンケ”の一言でけなすのはやめてください。いくら主任でも言い過ぎです」


さっきまでのどこか和やかな空気から一変、さすがにカチンときた私は、きつくマグカップを握りしめると、わざと主任から顔を背けた。

だいたい、主任と私は違う。

人には適材適所ってものがあるのだ。

私は今の自分にできる最大限の仕事を一生懸命にやっていて、やりがいだってあって、毎日靴の底をすり減らしながら楽しくやっている。
 

それを藪から棒にけなされたら、いくら主任が相手だろうと黙ってなんていられなかった。

何度も何度も足を運んでやっと契約まで漕ぎつけたお店だってある、わざわざ私宛にお礼のお電話を下さったお店もある--私の仕事は、そういう地域にがっつり根差した土着型なのだ。

それの何が悪い!
 
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