鬼系上司は甘えたがり。
新入社員の頃が思い出される。
あの頃、不安でいっぱいだった気持ちを少しでも自信に繋げたくて仕事内容を必死に覚えたっけなぁ……。うわあ、懐かしいなぁ……。
それに、主任に認めてもらうには、休みの日こそ頑張らなければ永遠に追いつかない。
先週末、紅葉狩りに連れて行かれたとき、こういうことをしているから大きな契約を取ってこられるんだ、努力していないはずがないんだって身を持って体験したし、これはきっと、私の第二次新人時代なんだろうと思う。
……なんか悔しいから本人には言わないけど。
うん、パエリア目指して頑張ろう。
「どうした薪、難しい顔して」
紙の束をじっと見つめながら気持ちも新たに気合いを入れていると、電池切れで動かなくなったと思ったのだろうか、声に少し気遣いの色を含ませた主任が顔を覗き込んできた。
ハッと顔を上げて主任を見ると思ったより至近距離で、その端正な顔にほんの少しばかりドキリとしてしまい、喉の奥がキュッと詰まる。
「……いえ、が、頑張ります」
「そうか、やってやれないことはないからな」
私の返事を聞くと主任は満足げに頷き、パエリアの様子を見るのだろう、そのまま私に背中を向けてキッチンに入っていった。