鬼系上司は甘えたがり。
二年半くらい前--って、もしかして……入社して間もない新入社員バリバリだった時期なんじゃない!? たぶん5月くらいだよね!?
自分でも指を折って数えていた私の動きが、脳内で時期を弾き出した瞬間ピタリと止まった。
えええっ!? ちょっ、そんなに前なのーっ!?
「ゆ、由里子……」
「……主任恐い、鬼恐い。私も数えてて、あれ?って思って何回も数え直したんだ。主任ってもしかして、めちゃくちゃ純情なんじゃない?」
「う、うん。なんか、そんな気がしてきた」
入社して一ヶ月足らずの新人に恋愛感情を抱くほど、主任にとっての私は魅力的だったんだろうか……由里子の言葉に思わず頷いてしまったのだけれど、なんだかずっと狙われていたような気がしてちょっと背筋がゾッとした。
それこそ、肉食獣が“コイツだ!”とターゲットを決め、抜き足差し足からの目にも留まらぬ猛然ダッシュで逃げる小動物にガブリと食らいつく、的な、虎視眈々感が否めないほどに。
「こ、ここはサバンナ……?」
一目惚れって言葉もあるくらいだし、理屈じゃないんだろうけど、果たしてどこら辺が主任のお眼鏡に適ったのだろうかと謎が深まる。