夢が繋げた未来~何度倒れても諦めないで~
「伝えたい事があったからです」

「お、おう」

「は、はい」


高岡くんも先生も戸惑った様に頷いていた。
呼び出したのだから普通にそうだろうと思っていたのだろう。
まあ、その通りだけど、私は生憎、普通ではない。


「でも、言葉でじゃない」


それだけ言って私は歩き出す。


「お、おい!!」

「高瀬さん!?」


驚く2人をよそに私はプールへと飛び込んだ。

私は口下手だし、気の利いた言葉なんて掛けられない。
だけど、想いを伝えられるのは言葉だけじゃないと思う。

私の場合は“泳ぎ”だ。
私も、先生も、高岡くんも。
皆、水泳が大好きで。
だから泳ぎでなら伝えられるのではないかと思った。

ここ最近、私が練習量を増やしたのも今日の日の為だった。
私の想いが伝わる様に、全部泳ぎにのせられる様に。

必死で、泳ぎ込んだ。
だから自信を持って言える。
私が泳ぎ終われば、いつもの高岡くんに戻ってくれる。
気まずい空気もこの3人に間に流れる事も無い。
彼は、必ず壁を乗り越えるだろう。

ねえ、高岡くん。

気が付いて。
あの勝負の本当の意味を。
そして私たちが得たモノを。
先生と原田選手の優しさを。
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