オフィス・ラブ #3
「昔?」
「一緒に住んでた人と…」
ぽかんと私を見つめながら、身体を起こすと。
私と向かいあうかたちに、あぐらをかいて、大塚、と真剣な声で呼ぶ。
「当時は、別に、なんの約束も、してなかった」
「でも…」
「そりゃ、お互い視野には入ってたけど。でも、具体的にそういう話をしたことすらない」
そうなの?
一緒に暮らしても、そんなものだったの?
疑問と、かすかな不安が顔に出ていたのか、新庄さんが小さく息をついた。
「あの部屋を、解約しようと思ってる」
「えっ」
東京の足場を、なくしちゃうの?
帰ってくるひまも、なくなるから?
言いつのろうと、身を乗り出して、新庄さんのひざに手をついた私を、彼が手で制した。
「戻ってくる時、新しい部屋、一緒に探そうぜ」
「もちろん、お手伝いします」
私、不動産運はけっこういいのだ。
そう言うと、違う、と新庄さんがあきれたように言った。
「その頃ちょうど、お前の部屋も、契約切れるだろ」
その、意味が。
頭に浸透する前に、腕を引かれて、キスをされた。