オフィス・ラブ #3

「大塚さんは、そういう話、ないの?」



当然の流れで、高木さんにそう訊かれ、どう返答しようか考えていると。

ちょうどその隣にいた堤さんが、まあまあと言いながら、高木さんのグラスをドバドバと日本酒で満たした。


僕、ビール飲んでたんですけど、と言いながらも、高木さんはそれに口をつける。


高木さん越しに、堤さんが私に笑いかけるのが見えた。

新庄さんは、堤さんにはもう、話したに違いない。







「いっそ転勤ならね」



私にしては珍しく、たまらずに打ち明けると、彩が同情してくれた。



「それでも、変わらないよ…」



そうなったところで、あの人が、確たる言葉をくれたりするとは、思えない。

食欲はないけれど、食べないと働く力が出ないので、なかば無理やりリゾットを押しこむ。



「たかが東京と大阪だけどさ」



あんたたちには、痛いね。

そう言う彩は、鋭い。



タイミングが悪い。

何もかも悪い。


やっと、こういう関係になれたところで。

それでもなかなか、会えなくて。


あと少し我慢すれば、過ごす時間が増えると耐えてきたのに。

その結果がこれ。



ゆっくりと過ごせた週末が、これまでに何度あった?

二日続けて一緒にいられた日が、どれだけあった?



この距離でも、こんな状態なのに。

今以上に離れたら、どうなるんだろう。

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