月はもう沈んでいる。
欲しかった、同い年の男友達。
女子からすれば下品な話題も、くつくつと忍び笑いながら盛り上がった。
だけど俺の相手に陽の名前が挙がったとき、心底はずかしいと思ったんだ。
異性と頭では分かっていても、意識はしていなかったから。突然の生々しい話題についていけず、ありえねえ、なんて言いながら陽と出会った頃の気持ちを思い出していた。
はじめての友達も、いちばんの友達も、女子なんて……やっぱりはずかしいことなのかもしれない、って。
――なんか、よそよそしい。
あっさり指摘されて向ける顔がなかった。登下校の道と学校じゃ態度が違うんだから感づかれて当然だった。
陽と色恋なんてありえない。
確かにそう思っていたのに、羞恥が興味に勝るには若すぎて、陽と距離を置くには心を共有しすぎた。
陽がもっと女らしかったら。仲が良くて羨ましがられるような女子だったら、俺まで茶化されることはなかったのに。
そんな姑息でかっこわるいことを考えている俺だから、陽を泣かせたんだと思う。
焦っていたんだ。男友達と楽しくやっていきたくて。陽を、バカにもされたくなくて。
まちがったことを言ったつもりはなかったけど、心にもないことを言ったと思った。
「中学なんか来んじゃなかった……」
決して涙を見せようとしない陽の肩は小さく震えていた。
「1時間もかかるし、男子はバカだし、女子は少食だし」
「……給食のおかわりは1回にしとけ?」
「足りねえのや! こちとら成長期真っ只中なんだっつーの!」
地面に吐き捨てる陽はうつむいたままで、声だけは元気だった。俺はかける言葉を探しながら、自転車のスタンドを足で蹴り上げた。