麗雪神話~理の鍵人~
シルフェは身を起こし、真っ先に誰かを探すようにきょろきょろと視線をさまよわせた。そしてすぐに目的の人物を見つけたようだ。

シルフェの隣に倒れていた人物―炎のような赤い髪の美青年を。

「サラマス! サラマス、起きてサラマス!」

サラマスと呼ばれた青年は、シルフェに呼ばれて顔をしかめながら目を開けた。

「げ、シルフェ…ここは―――“炎の庭”か。
おい! 皇帝たちはどうなった!? どこにいる!?」

サラマスにそう言われて、ボリスもはっとした。

慌ててあたりに視線を走らすが、三人以外の人影は全く見えない。

だだっ広いごつごつとした岩の荒野が、広がっているだけだ。

「残念だけど、時の流れが人間界と違うから、到着する時間にズレが生じたみたいね…きっとレコンダムたちのほうが、早くここにたどり着いたはず」

―なんということだ。

ボリスは唇をかみしめた。

レコンダムを討つ絶好の機会を逃したばかりか、天上界への侵入などという暴挙を許してしまうなんて…!
< 31 / 159 >

この作品をシェア

pagetop