麗雪神話~理の鍵人~
「急いで奴らを探さなきゃな……」

苦虫を噛み潰したような顔で呟くサラマスに、シルフェが突然がばりと抱きついた。

「サラマス…無事でよかった!!」

ボリスはその様子を、目を見開いてみつめることしかできない。

うすうす勘付いてはいたが、このサラマスと言う男のことを、シルフェは―――

「だぁっ! ひっつくな! うっとうしい!」

振りほどこうとするサラマスの腕に細い腕をからませて、シルフェは満足そうに笑っていた。

近寄りがたい、入っていけない…そんな感じがする。

ボリスが思わず黙りこくっていると、シルフェがやっとボリスの存在を思い出してくれた。

「ああ、ボリス、彼は炎の神サラマス。サラマス、彼はボリスといって、レコンダムを討つ予定の政治家の卵なの。いろいろあって行動を共にしていて―――」

紹介する間も、絡めた腕を離そうとしないシルフェ。

ボリスは思わず、サラマスを睨みつけていた。

「おい、サラマスとやら、いい加減離れたらどうだ」

「俺に言うか!? へいへい、言われなくても離れるっての」

サラマスはぐいぐいと腕に力をこめ、腕力の差でシルフェを引き離した。

ボリスはそれに少し拍子抜けする。

(この男の方は、シルフェに気はないのか)

ならば自分にもまだチャンスはあるのだろうか。
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