君の味に落とされて。
おしゃべりに夢中になっていたら、あっという間についてしまった。
「学校から近いんだな」
ふぅん、と先輩が顔を上げてカフェの外観を見ている。
薄いピンクを基調として、屋根は落ち着いた茶色。
看板は金色の文字で英語で書かれている。
白いカフェテラスへと目をやると、顔馴染みのお客さんがいることに気がついた。
「真嶋さん!久しぶりですね!」
「お~純菜。久々~」
2つ年上の真嶋 寛斗さんは、あたしがこのカフェを手伝い始めた頃から来てくれるようになった。
確かその時真嶋さんはまだ高校生だった。
だからあたしの失敗とかも見られてて、恥ずかしいけど…笑って許してくれる、お兄ちゃんのような人。
テラスの柵越しに真嶋さんとちょっと話していると、急にクスクスと笑い出した。
「そっちのお兄さんが拗ねそうだけどいいの?」
お兄さん?と振り返るとちょっとムスっとした顔の玲於先輩がいた。
「わぁ!ごめんなさい!放置してしまうなんて!」
「俺はまた来るから、そっちのお兄さんの相手しな」
「ありがとうございます!玲於先輩ごめんなさい、中入りましょう!」