~Lion Kiss~
思わず身体が硬直した。

抱き締められたのではない。

疑われているのだ。

治人さんは、私の髪に顔を埋め、臭いを嗅ぎ始めた。

頭、首筋、服。

「やめて」

抱き締められたかった両腕は、今は恐怖でしかない。

「治人さん、もう離して」

もがく私を、治人さんが睨んだ。

「マヒルが悪いんだろ?!」

「治人さん、もう離して」

次の瞬間、ガツンと後頭部に衝撃が走り、私は目を見開いた。

治人さんは私を突き飛ばすと、足早に奥へと消えていった。
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