~Lion Kiss~
ニタッと笑った治人さんの顔を見た時、とうとう私は限界を感じた。

「嫌っ」

思いきり治人さんを突き飛ばすと、私は身を翻した。

マンションのエントランスのタイルで滑って転んだけど、私は脱げて飛んでいった靴を探す余裕なんてなかった。

怖くて悲しくて、死にそうだった。 

やみくもに走るには人が多すぎて、それでも私はしゃくり上げながら歩いた。

六本木は、いつでも大抵混んでいる。

人々が行き交う中、ワアワアと泣きながら歩く私は、きっと異様だっただろう。

けれど、誰にどう思われようと、そんなことはどうでもよかった。

なんで?なんでよ。

來也のせいだ。

來也が悪いんじゃん!!

私は來也に電話をかけた。
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