~Lion Kiss~
「いったあ!」

「服も靴も、諦めろ」

そう言ってから、來也は私をフワリと胸に抱いた。

「……俺が買ってやるから」

私は來也が温かくて、心地よくて、思わず眼を閉じた。

「……買わなくていいよ。必要ない。それより、機嫌直して」

異性の中で一番親しくなった来也に嫌われたくなかったし、これ以上怒られたくなかった。

來也は小さく息をつくと、諦めたように私の瞳を覗き込んだ。

「二度と有川治人と会わないって約束するなら許してやる」

私は即答した。

來也に怒られたくないし、私ももう二度と、治人さんに会いたくなんかなかったから。
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