~Lion Kiss~
大きな背中を見ているうちに、私は無性に寂しくなって、堪らずに來也の背中に抱きついた。

「來也ってば、もう怒んないで」

來也は動きを止めた。

それからゆっくりと振り向いた。

私は來也を見上げて、ポツンと呟いた。

「……ありがと。助けてくれて」

來也は唇を引き結んだまま私を見つめる。

彼は相変わらず瞳に苛立ちを浮かべていて、私はどうすればいいか分からなかったから、ただ黙って來也を見つめた。

「もう、あいつの部屋へは二度と行くな」

「……いやでもまだ服と、靴が……」

次の瞬間、ブシッ!と額に衝撃が走り、私は思わず額を押さえた。

來也のデコピンが命中したのだ。
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