~Lion Kiss~
そんな私を前に、またしてもドッペルゲンガーが意味深な笑みを浮かべたまま話し出した。

「……來也はね、私と付き合ってたの」

「……聞きました」

「彼はね、私の事が嫌いになった訳じゃないし、私だって彼をまだ好きよ。けどね、彼って、同情心が強いのよ」

先の読めない話に、冷静さを保てない。

「來也はね、愛する人を亡くして、心に大きな傷があるの。だから、スペアが必要なのよ。きっとあまりにも大きな傷のせいよ」

次第に心臓が耳元で脈打っているような錯覚を覚える。

自分の身体なのに、早鐘のようなそれをどうすることも出来ない。

「來也があなたに優しいのは、ただの哀れみよ。彼は絶対に私の元へ帰ってくるわ。
私だけよ、彼を理解できるのは」
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