~Lion Kiss~
「だから、來也には、淋しい思いをさせちゃて。それで……彼もあなたに同情してるのよ。
……まあ、あの部屋に入ってよく見て、よく考えなさい、自分の立場を」

そこまで言うと一旦言葉を切って、彼女が私に近づいた。

至近距離から私を見つめる二つの瞳は、まるで何かが反射して光る蛇の眼のようだった。

それから最後に、彼女はゆっくりと唇を引き上げると、囁くように言った。

「あなたはね、スペアよ。じゃあね」

ちょっとまって、どういう意味?!

まるで理解出来ないのに、カツカツと踵を鳴らして遠ざかるドッペルゲンガーを、私は追いかけることが出来なかった。

……ダメだ。

頭が働かない。

平常心を取り戻せないまま、私は必死で考えた。
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