~Lion Kiss~
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『來也っ!あなた、緑川冴子さんとのこと、どうするの?!いい加減に返事をしなさい!』

爆睡中だった俺は、耳元で鳴り始めたスマホを反射的に手に取り、後悔した。

……朝っつっても、早すぎだろ。

……午前五時だぜ。

俺は、こんな早朝からこんなでかい声が出る母親……相澤理沙子の顔を脳裏に描き、目眩がした。

と同時に、誰に咎められるわけでもなく天真爛漫に育ち、自分の思うままに人生を歩んできた母親を羨ましく思った。

……全く親父も物好きな男だ。

いまだに親父は母親を溺愛中で、息子の俺としては二人を見て呆れるばかりだ。

普通の家庭に育ち、世間一般の常識を教育されて育ったなら、朝の五時に電話し、その相手を責めないだろう。
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