~Lion Kiss~
案の定、彼女は俺を制したが、唇を離した時には緑川冴子は立ち去った後だった。

俺はマヒルを見つめた。

形のよい輪郭に大きな瞳。

さっきまで口付けていた、ふんわりと柔らかいピンク色の唇。

探したかったんだ。

彼女の表情に少しでも俺に対する好意が浮かんでいたらと。

けれどそんなものはどこにも見つけられないまま、俺達は互いに悪態をついた。

俺はマヒルと、このまま別れたくなかった。

ダメ元で飲みに誘うと、マヒルはムッとしながらもOKした。

手を繋いだ俺を、呆れたように見上げたマヒルが可愛くて、ついついからかってしまう。

……まるでガキみたいな自分に、俺は内心失笑した。

ほんの僅かな時間だったが、マヒルと酒を飲んだその夜を、俺は心に刻み付けた。

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