~Lion Kiss~
「やめて!」

治人さんは動き続けた。

苦痛に歪んだ顔が徐々に上気し、恍惚の表情へと変わる。

再び私は目眩がした。

なんでこんな事になったのか。

今日は治人さんの誕生日で、私達は一緒に食事に出掛ける筈だった。

それなのに、彼は飲めないお酒を飲んで深夜に帰り、私を……。

泣けてきた。

訳がわからない。

分かってるのは。

私の眼から涙が浮き上がり、頬を伝った。

「治人さん、お誕生日おめでとう」

私の上で治人さんはピタリと動きを止めて眼を見開いた。

憎しみなのか怒りなのか分からない光を宿した瞳が、やがて迷うように揺れた。

それから一瞬ギュッと眼を閉じ、頭を左右に振ると、治人さんはユラリと身を起こして私から出ていった。
< 81 / 444 >

この作品をシェア

pagetop