~Lion Kiss~
うん、と返事をした後、菜穂さんのデスクを見ると、彼女は丁度こっちを見ていた。

「大丈夫?」

彼女の口パクに思わず首を横に振る。

「後で聞くから」

私はコクンと頷いた。

*****

「信じられない!」

菜穂さんの怒りのこもった言葉に、私は小さく息をついた。

「治人さんの30歳の誕生日だったんです。なのに……」

「なんでそんなに豹変したんだろう。心当たりはないの?」

「心当り……実は、1つあります」

それは、この事件から二週間前に來也とキスした事だ。
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