密室の恋人
 嬉しいような。

 まだついていけてないような。

 結婚のことより、気になることが多すぎて。

 眠れないと夜中にワン切りの電話をかけてきた蒼汰。

 無意識のうちに、あの少年のことが気になって、会社に入ったものの、ずっと落ち着かない気持ちだったんじゃないだろうか。

 そんなことを考えると、無性に不安になってくる。

 蒼汰さんに会いたいな、と思いながら、窓の外を見た。

 なんとなく、蒼汰の車を駐車場に探したが、蒼汰は自分が此処に居ることも知らない。

 蒼汰はまだ仕事中だったので、友人と食事に行くとしかメールに入れてなかったからだ。

 ……まあ、上村さんなら、教えてなくても、何処からともなく、現れそうだけど。

 なんだかわからない仙人の能力で。

 レジでもまだ麻友は、盛んに式の話をしてきた。

「まだ誰にも言ってないんだ?
 私言っていい?

 ああ、自分で言いたいよね。

 そうだ。
 言うの忘れてた。

 結婚おめでとう」

 おい。
 普通は、それが最初じゃないのか、と苦笑いしながらお金を払おうとしたとき、レジに居た若い男の店員に、
「お代はもういただいております」
と言われた。
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