密室の恋人





 もう寝ちゃった……。

 凛子は自分のベッドで、健やかな寝息を立てている蒼汰の顔を見る。

 やっぱり仕事で疲れてるのかな。

 それとも、まだ不眠症気味なのか。

 あれは不幸な事故だったと社長は言う。

 確かにそうなんだとは思うけど。

 自分が助けを呼べなかったせいで、人が死んだなんて、子供の蒼汰さんには、かなりの衝撃だったろう。

 でもそれにしても、記憶から消すほど罪の意識に囚われてるなんて。

 まだ私たちの知らないなにかがあるんじゃないだろうか、と凛子は思った。

 それにしても、やっぱ、綺麗な顔だな。

 よく見ると、お義母さまそっくり。

 とか思うと、緊張しちゃうけど。

 凛子は蒼汰に言われて枕許に置いていた手錠を眺めたが、それをはめることはしなかった。

 うっかり蒼汰が寝てしまったら、手錠をはめて、凛子が弟の部屋に行くことになっていたのだが。

 そのまま、蒼汰の寝顔を見ていた凛子は呟く。

「……寝たふりですね」
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