マエストロとマネージャーと恋と嫉妬と
3曲目。最後はブラームスの1番。


苦悩から歓喜へ。単純かつ明快なこの曲に、自分を重ねる人は少なくないはず。
僕だってそうだ。
苦しんで、悩んだ先にどうにか舞台に立つことが出来ている。


あらゆるリズム、テンポ、アインザッツ(出だし)に至るまで、音楽は時間にこだわる。
それも秒単位ではなく、本当に一瞬の事た。
囚われるといっても良い。
休符だって時間があって表現が出来る。
音の無い空白の時間も一つの音楽なのだ。


音楽はただ前を見て進んでいく。
後に戻ることはない。
時間が流れるように。人生を送るように。


音楽を聴くために買ったチケットは、今日と言う日、今と言う時間を、お客さんはお金を払い買ってくれた事でもあるのだ。


聴衆と楽団員と僕とスタッフと。この空間を時間を共有出来る喜び。

それを考えながら僕は指揮をしていた。
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