マエストロとマネージャーと恋と嫉妬と
曲が終わり、次の曲に向けての舞台の準備が始まる。
楽団員の人数も増え、ピアノも移動されてきた


とうとう。いよいよ。

覚悟は出来ている。諦める。

……何を?

自分で自分に問いかける。


ピアニストへの夢なのか、マネージャーとして
プロコフィエフの曲を聴く事なのか、ただ黙って何にも囚われずに、曲を聴く事なのか。


楽団員が席に着き、チューニングが始まる。

この曲を聴き終った時、私はすっかり変わっているかもしれない。
それが良い方向になのか、そうではないのかは
分からないけれど。


舞台袖に置かれているモニター画面を、ぼんやりと眺めていた私の視界の端に、赤いドレスの裾が見えた。
その後に続く革靴のコツコツという音。
振り向くと、ちょうど舞台へと出ていく梁瀬さんの背中が見えた。


視線を画面に戻せば、二人が舞台中央へと向かう姿が、写し出された。

どちらも現実なのだが、頭が少しこんがらがる
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