マエストロとマネージャーと恋と嫉妬と
「奏ちゃん。足元気をつけてよ。」

気持ちよくなって、ふわふわした足どりが危なっかしいのか、マエストロが声を掛けてきた。

「ハイハイ。わかってます。マエストロ。」

「ゆ・う・へ・い!」

「ハイハイ。悠平さん。」

「え…。」

自分から名前で呼ぶ事を強いておきながら、呆気なく私が応えたので、却って動揺している様子だ。


するとすぐ隣を歩いていたマエストロが、立ち止まって腕時計を見る。

「…良かった。まだ日付変わってない。」

そう言ってチェスターコートのポケットに手を突っ込んだ。

私の前に恭しくラッピングされた小さな箱の様なものを差し出す。


「…お誕生日おめでと。」

あ!

すっかり忘れていた。それもこれもこの人のおかげだ。
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