マエストロとマネージャーと恋と嫉妬と
客演として招かれたNYのオーケストラでの公演も最終日を終え、ぞろぞろと観客がホールから出てくる波もやっと落ち着いてきた。

マエストロの楽屋は、スタッフや関係者がひっきりなしに訪れ、それからシャワーを浴びるなり着替えたりするので、まだまだ時間がかかりそうだ。


うーん、とタブレットの画面を見つめる。

問題は、費用だ。

これから先どうなるか分からないと思い、寛政の改革の松平定信も感心するくらい、質素倹約に私は努めてきた。

それでも社会人になってから数年でためた金額では、たかが知れている。

勉強しながらのアルバイトとかが、出来ればいいが、それに伴う語学力の問題もついてくる。

語学力……。

一気に萎える。

フランス語であれ、英語であれ、日常的な聞き取る事に於いてはある程度ついていけるようになってきた。
だが、自分から発言することに於いてはメチャクチャだ。
文法もへったくれもない、当てはまる単語を並べただけの会話。

こんな語学力で、ソルフェージュ(音楽の基礎的な訓練)や音楽史といった座学なんてついていけるのか……。
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