マエストロとマネージャーと恋と嫉妬と
「私、ピアノが好きなんです。」

「?…うん。ずっとやってたんだよね。」

奏ちゃんをマネージャーとして社長から紹介をされた時に、そう言ってた。昨日の事の様に、覚えている。
それがどう関係してくるのか、思わず固唾を飲んだ。

「ピアノが好きで、ずっとやってて、ピアニ
ストになりたいんです。なりたかった、じゃ
ないんです。なりたいんです!」

「あ……。」

それを聞いて、僕は固まる。

現在進行形の夢なんだ。


「いい加減どうなの?って思ってますよね?
コンクールに参加出来る年齢なんて過ぎてる
し、音楽事務所のオーディションなんて幾つ
も落っこちてるし。」

顔を天井に向けたまま、奏ちゃんは話を続けた

「私、マネージャーの仕事をしてて、マエス
トロの指揮でのピアニストの演奏を何度も聴
いてきました。………羨ましくて、悔しくて、
何でこの舞台に立つのが私じゃないんだとか
そんな事ばっか考えるんです。………あーあ、
イタいですよね。」

自嘲じみた言葉を吐き、苦笑いをする。
正直、目の前にいる人物が奏ちゃんとは、思えなかった。それほどまでに初めて見る彼女の姿だった。
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