マエストロとマネージャーと恋と嫉妬と
気付けば、いつも音楽が日常の一部にあったし
家族が音楽を楽しむ姿を見れば、自然と自分もやってみたくなった。


他の家庭よりは、恵まれた音楽環境だった。
小学校の頃には、大人が弾くような曲も弾けたし、コンクールで賞を貰った事もあった。


「奏ちゃん、凄い!」

「上手!もっと弾いて!」


そう言われて、得意げにならない子供はいない
だろう。
しかしそれは、小さな円の中の話に過ぎず、正に「井の中の蛙大海を知らず」そのものだった


音高、音大に入る頃には自分の実力というものが改めて分かってきた。
必死に頑張っても、同級生はそれと同じ位頑張る。埋めようとした差は、少しも縮まる事はない。


それでも諦める事だけはしたくなかった。
だって私はピアノが好きだから。


国際的なコンクールで賞を貰い、音楽事務所と
契約してプロになる。
そういう青写真を抱いて。
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