マエストロとマネージャーと恋と嫉妬と
やがて僕に見られていたことを、奏ちゃんは察したのか、はっとなり、


「あ、フ、フランス語勉強してるんですけど
いざというときは助けてくださいね。」

と、言ってきた。

やった!
珍しくいいトコを見せる事ができる!

「大丈夫。僕がついてるから。」


自分で言っててキュンキュンしてしまった。
言った相手は普通の様子だったけど…。

「何覚えたの?一番最初に。」


“初めまして”とか“よろしくお願いします”とか
かな?


「何があってもこれが一番大事かな、って思っ
たんです。
“ Où sont les toilettes ?”」
(トイレはどこですか?)


…凄い。
その発想は無かった。
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