マエストロとマネージャーと恋と嫉妬と
パアン!と、一つクラップさせてみる。
音は温かく響いた。
良い感じです。
まあお客さんが入った状態だと、音はまた変わってくるけど。


明日から、数十人対一人の試合が始まるのだ。
指揮者は何処までも孤独だなあ。
楽しみ半分、不安半分。いつもの事だ。


男と女の間には、深くて暗い河があるとはよく言うけれど、同様にオーケストラと指揮者の間もそうなのかもしれない。


そして翌日。リハーサルが始まる。

「初めまして。日本から来ました。ユウヘイ
ヤナセです。」(仏)


ドンドンと楽団員が足で床を踏み鳴らし、弦楽器の人達は返した弓で譜面台をコツコツ叩く。

これはブーイングではなく、楽器を持って手が塞がっているので、拍手の代わりなのだ。
まあ、これはご挨拶程度。


「僕の事をご存知だというマニアックな方は、
この中になかなかいそうに無いので、挨拶代
わりに一 曲。ブラームスを。」(仏)


あはは、と空気が温かくなった様だ。掴みはまずまず。


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