マエストロとマネージャーと恋と嫉妬と
私は結局本番当日は聴かなかった。
聴かなかったというより、聴けなかった。
今の私には辛い。


才能の前にはどんな努力も平伏す。
マエストロの弾き振りを見てまざまざとその事を思い知らされた。


もう夢を見るのは諦めたら?
そう引導を渡された様な気がした。





「は?国際コンクール3位?」(仏)

公演終了後シモーヌさんに誘われ、彼女のアパルトマンで夕食を御馳走になっていた。


トマトのファルシやジャガイモとアスパラと
ベーコンのキッシュ、それに温野菜がたっぷり
と入ったポトフなんかを私も少しだけ手伝って作った。


デザートはクレープにリンゴとラムレーズン、バニラアイスを添えてと至れり尽くせりだ。


おまけにワインは値の張らない安いものでも十分美味しかった。
そのワインの味がつまらなくなったのは、マエストロの話題になってしまったからだ。


「知らなかったの?子供の頃と、大学生の頃
に賞を貰ったって聞いたけど。」(仏)


…何それ。

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