マエストロとマネージャーと恋と嫉妬と
普通、客席から向かって横向きに置かれるはずのピアノは、ステージマネージャーさんらしき人の指示で演奏者が背中を向ける形で置かれる


そして何よりもそのピアノには反響板がなかった。客席からは弦が見える。

自分の胸がざわざわとし始める。

オーケストラはピアノを囲む様なかたちで配置される。
マエストロがそのピアノの前に座った。
身を乗り出し、両手でオーケストラに合図を出す。滑らかに曲は始まる。


モーツァルト作曲ピアノ協奏曲第21番
ハ長調K467

ピアニストが指揮を兼ねる弾き振り。
切り札というのは、これだった。

時折マエストロは見えやすい様に立ち上がって
指揮をしたり、両手が塞がっているときは、表情や目で合図を送る。


最早私の耳には何一つ音楽が入って来なくなった。
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