マエストロとマネージャーと恋と嫉妬と
好きなひとにこんな自分なんて見せたくない。
だからこんな愚痴まがいの事なんて、言いたく無かったのに。


「…私が言うのも差し出がましいとは思うんで
すけれど。」

しばらく無言だった奏ちゃんが、口を開いた。


「聞いてたら、梁瀬さん失敗したのを取り返
す事に躍起になってるし、指揮者としての力
量を誇示して、見栄を張ることにだけ力を尽
くしてませんか?」


僕はひどく動揺した。
その通りだ。


「梁瀬さん、飛行機の中でおっしゃってまし
たよね。やるべき事をやれば良いだけだ、っ
て、だから…」「奏ちゃん。」

言葉を遮った。


「今回の公演が終わったら、ちょっと考えて
みようと思う。」

「…考えてみる、って何をですか?」


「身の振り方。指揮者を続ける事に自信がな
くなってきたんだ。」
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