マエストロとマネージャーと恋と嫉妬と
「で?勉強不足がバレて、いじめでもされま
したか?」

「…いじめって。
でも今回の指揮者はハズれだって思われてる
と思う。」

「面と向かって言われた訳ではないんですよ
ね。」

「さすがにそれはないけど、もう空気が、耐
えられないって言うか。」

昼間のリハの重い雰囲気を思い出す。

「挽回しようと一所懸命やるんだけど、それ
も空回りして。」

「はい。」


「ちょっといじってフランスっぽくない感じ
にしたらどうかなとか。じゃあイン・ストリ
ング(弓を深く入れる)にして重くしてみようと
か、いやいやそうじゃなくて、って何がやり
たかったのか分かんなくなってきて。」

「…。」


「そしたら、その前に指示した事と矛盾した
事言っちゃって。自分の中でそれがもう決定
的だった。」

「…。」


仕舞いには、相槌も奏ちゃんは打たなくなっていた。
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