疑似恋愛
中に入ると、オレンジ色の髪の毛の男性がこちらに背を向けて座っていた。
それ、危ないんじゃない?暗殺とかさ。おエライさんなんでしょ、貴方。背後からガーッて…。
「心配は無用だ、ユーリ。誰が来たかなど、すぐに分かる。お前ほど家の中で魔力を垂れ流している人間はいない。」
え、すごい。この人も心の声が聞こえる人なんだ。というか…やばい、この人危ない人だ。魔力なんて私にはないよ、そんなもんあったらもう人間じゃないでしょ。これが中二病というものか…恐ろしい。
「…何の御用でしょうか。」
ぶっちゃけ、もう疲れたし、早く休みたいんだけど。
「それを本気で聞いているのなら、医者を呼ばねばならんな。」
「そんな訳ないじゃないですかー、冗談っすよ。王宮でのことでしょ…ですよね。」
やばい、私以外とその口調で話すなってエステルが言ってたっけ。忘れてた。
「…その口調のことも問い詰めたい所ではあるが。まあ、いい。」
私の父であるらしいその人が椅子から立ち上がってこちらへ振り返った。
意外や意外、優しそうな垂れ目にふわふわとした髪、口元に笑をたたえるその容姿…ホストみたいだった。偉そうな口調からは到底想像出来ない。もっと厳つい顔をしているのかと思ってた。
「ユーリ、聞いたぞ。最低限のマナーは身についていたようで何よりだ。今までが酷い有様だったからな、今日しっかりと出来ていなければ、排除するつもりだったのだがな。」
ふん、と鼻で笑われた。その容姿でそんな事を言われるとイラッとくるな。また思わず「なんですって!」なんて、言おうとしていた。どうやら、感情が昂ると『ユーリ』が出てくるらしい。因みに私は、
「テメェ、この野郎!なんて怖いこと言うのさ!」
と、言おうとしていました。ごめんなさい。『ユーリ』の方がマシですね。
てか、排除って…排除って。
…『ユーリ』、崖っぷちだったんだね。良かったね、私が出てきて。じゃなきゃ、死んでたよ。
「…エステルが、教えてくれた…のです。私がお願いしたから。」
「ほう…ネルに言われなければ、あんなのを雇う気などサラサラ無かったが。結構使えるようだ。」
「あ、あんなの…。」
こいつ、性格悪いな。私、こういうタイプは嫌いなんだよね。いかにも、『俺、出来るヤツだろ?凄いだろ?』的な感じの奴は。こんなのが父親なんてねぇ…。
「何か、文句でも?」
にこりと笑って威圧感を出してきたので、私も応戦した。
「…いいえ?別に、性格がねじ曲がっているなんて、思ってもいませんわよ?」
「おや、酷い言い草だね。こんな子が私の娘だとは…。嘆かわしい。」
「まあ、貴方には言われたくありませんわねぇ。そんなんじゃ、ご婦人方に呆れられますよ?」
「ふん、そんな有象無象には興味はない。私は、ネルが居ればそれで充分だ。」
「…ぐはぁっ!」
リア充攻撃を受けてしまった。辛い、辛すぎる!何が悲しくて親の惚気を聞かなければならないのだ。何でこの人平気でこんな事言えるの!?
「…ふん。」
と、思ったが、父は微かに頬を赤らめていた。若干、恥ずかしかったようだ。
「…まあ、とにかく。」
ごほん、と咳払いをして仕切り直す。
「これからも努力するように。決して我が家の顔に泥を塗るような事をするなよ。」
「それ、今更じゃない?何故、このタイミングでそんな事を仰るのです?」
「…それは」
父は僅かにたじろいだが、すぐに無表情になった。…この家の人、皆この技を使えるのかな。
「それは、お前には関係ない。…要件は以上だ。下がれ。」
どうやら、話しを続ける気は無いらしい。
疲れたし、さっさと下がろう。
無言で頭を下げ、部屋から出ると、エステルが少しドアから離れた所に立っていた。
「お説教かと思っていたけど、違ったわ。逆に、褒められたよ。エステルのお陰だね、ありがとう。」
「…私は、職務を果たしたまでです。」
意外そうに目を丸くしながら、エステルが答えた。…お礼すら言えない子だったのね、『ユーリ』。
「その口調については、旦那様は何か仰っておられましたか?」
「ううん、別に何も。」
「そう、ですか…。」
「まあ、突っ込まれないならそれに越したことは無いよ。私、現段階では何も分からないから。」
「…。」
エステルは無言で私の顔をじっと見ていたが、聞いてもしょうがないと思ったのか、やれやれと首を振った。
「奥様の元へご案内致します。」
「…あ、そうだったね、そうだったよ。完璧忘れてた。」
やっと休めると思っていたんだけどなあ…。
それ、危ないんじゃない?暗殺とかさ。おエライさんなんでしょ、貴方。背後からガーッて…。
「心配は無用だ、ユーリ。誰が来たかなど、すぐに分かる。お前ほど家の中で魔力を垂れ流している人間はいない。」
え、すごい。この人も心の声が聞こえる人なんだ。というか…やばい、この人危ない人だ。魔力なんて私にはないよ、そんなもんあったらもう人間じゃないでしょ。これが中二病というものか…恐ろしい。
「…何の御用でしょうか。」
ぶっちゃけ、もう疲れたし、早く休みたいんだけど。
「それを本気で聞いているのなら、医者を呼ばねばならんな。」
「そんな訳ないじゃないですかー、冗談っすよ。王宮でのことでしょ…ですよね。」
やばい、私以外とその口調で話すなってエステルが言ってたっけ。忘れてた。
「…その口調のことも問い詰めたい所ではあるが。まあ、いい。」
私の父であるらしいその人が椅子から立ち上がってこちらへ振り返った。
意外や意外、優しそうな垂れ目にふわふわとした髪、口元に笑をたたえるその容姿…ホストみたいだった。偉そうな口調からは到底想像出来ない。もっと厳つい顔をしているのかと思ってた。
「ユーリ、聞いたぞ。最低限のマナーは身についていたようで何よりだ。今までが酷い有様だったからな、今日しっかりと出来ていなければ、排除するつもりだったのだがな。」
ふん、と鼻で笑われた。その容姿でそんな事を言われるとイラッとくるな。また思わず「なんですって!」なんて、言おうとしていた。どうやら、感情が昂ると『ユーリ』が出てくるらしい。因みに私は、
「テメェ、この野郎!なんて怖いこと言うのさ!」
と、言おうとしていました。ごめんなさい。『ユーリ』の方がマシですね。
てか、排除って…排除って。
…『ユーリ』、崖っぷちだったんだね。良かったね、私が出てきて。じゃなきゃ、死んでたよ。
「…エステルが、教えてくれた…のです。私がお願いしたから。」
「ほう…ネルに言われなければ、あんなのを雇う気などサラサラ無かったが。結構使えるようだ。」
「あ、あんなの…。」
こいつ、性格悪いな。私、こういうタイプは嫌いなんだよね。いかにも、『俺、出来るヤツだろ?凄いだろ?』的な感じの奴は。こんなのが父親なんてねぇ…。
「何か、文句でも?」
にこりと笑って威圧感を出してきたので、私も応戦した。
「…いいえ?別に、性格がねじ曲がっているなんて、思ってもいませんわよ?」
「おや、酷い言い草だね。こんな子が私の娘だとは…。嘆かわしい。」
「まあ、貴方には言われたくありませんわねぇ。そんなんじゃ、ご婦人方に呆れられますよ?」
「ふん、そんな有象無象には興味はない。私は、ネルが居ればそれで充分だ。」
「…ぐはぁっ!」
リア充攻撃を受けてしまった。辛い、辛すぎる!何が悲しくて親の惚気を聞かなければならないのだ。何でこの人平気でこんな事言えるの!?
「…ふん。」
と、思ったが、父は微かに頬を赤らめていた。若干、恥ずかしかったようだ。
「…まあ、とにかく。」
ごほん、と咳払いをして仕切り直す。
「これからも努力するように。決して我が家の顔に泥を塗るような事をするなよ。」
「それ、今更じゃない?何故、このタイミングでそんな事を仰るのです?」
「…それは」
父は僅かにたじろいだが、すぐに無表情になった。…この家の人、皆この技を使えるのかな。
「それは、お前には関係ない。…要件は以上だ。下がれ。」
どうやら、話しを続ける気は無いらしい。
疲れたし、さっさと下がろう。
無言で頭を下げ、部屋から出ると、エステルが少しドアから離れた所に立っていた。
「お説教かと思っていたけど、違ったわ。逆に、褒められたよ。エステルのお陰だね、ありがとう。」
「…私は、職務を果たしたまでです。」
意外そうに目を丸くしながら、エステルが答えた。…お礼すら言えない子だったのね、『ユーリ』。
「その口調については、旦那様は何か仰っておられましたか?」
「ううん、別に何も。」
「そう、ですか…。」
「まあ、突っ込まれないならそれに越したことは無いよ。私、現段階では何も分からないから。」
「…。」
エステルは無言で私の顔をじっと見ていたが、聞いてもしょうがないと思ったのか、やれやれと首を振った。
「奥様の元へご案内致します。」
「…あ、そうだったね、そうだったよ。完璧忘れてた。」
やっと休めると思っていたんだけどなあ…。