元通りになんてできない


「どんな形になっても、相手の人は無責任な人ではありません。誠実な人です。だから、産むことにも、育てる事にも不安はありません。
一人ではないので」

存在してくれている、それだけで心強い。

「薫さんが辛くないのなら、わしらは何も言うことはない。薫さんはわしらの娘だ」

「お義父さん…」

「これからもずっとだよ。知里の母親だし、信次朗のお嫁さんだ。
辛くなったり、困った事があったら、無理をせず必ず言って来るんだよ?と言っても、また、何とかするって、言ってきてはくれないだろうけどね」

「お言葉だけで充分です。有難うございます」

「薫さんは頑張り過ぎるからな」


「さあさあ、お話は済みましたか?お茶を入れましたよ。
お父さんはお煎餅と甘くないおまんじゅうですよ。私達はスイーツを頂きますけどね、薫さん」

「あ、は、い」

「わしだってスイーツとやら食べるぞ。甘いモノは好きなんだ。…言ってなかったけどな」

「まあ、いつからですか?」

「…昔からだ。大の男が、なんて言われたくなくて我慢してたんだ」

「あら、まあまあ。言ってくださればいいのに」


「薫さん、子供が産まれたら会わせてくれないか?知里にも会わせたいし。
ずっと兄弟が欲しいみたいで、サンタに頼んでるようだから」

「知里…。はい、連れて来ます。必ず」

「さあ、食べましょう。お父さんに取られちゃうから少し残念だわ〜」

「おい…母さん、それは無いだ…」
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