コールセンターの恋愛事情
「当たり前だけど、冷房がないな」

畳のうえに荷物を置くと、辻本さんが言った。

「でも涼しいからいいですよね」

そう言ったわたしに、
「そりゃ、山の中だから当然だろうな」

内場さんはガラリと障子を開けた。

フワリと、部屋の中に風が入ってきた。

都会独特の蒸し暑い風じゃなくて、涼しい風だった。

本当に田舎だ。

「んっ?」

辻本さんの声に視線を向けると、彼はスマートフォンを見ていた。

「どうかしたか?」

そう声をかけた内場さんに、
「蔵野からLINEがきてる」

辻本さんが答えた。

「えっ、蔵野さんからですか?」

わたしと内場さんは辻本さんへと歩み寄った。
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