天使のはしご
彼女は、手を伸ばす。
それまで有ることすら忘れていた窓が、彼女の手を止める。
「私はあなたに触れられない。
私の声は残っていた最後の生命(ちから)が溢れ出ている、今しか届かない。
けれどもう、生命は消える」
消える。そう彼女が言った瞬間に、曇の切れ目から光が差して彼女に降り注いだ。
光が差したのはたった一瞬だった。
けれどその『たった一瞬』に、光りに透ける羽根が彼女の背中に見えた。
彼女を簡単に包みこんでしまえる程の大きく綺麗な羽根。
いや、翼という方が近いのかもしれない。
あの翼も、具現化した彼女の最後の生命なのだろうか。
ならば光りの中でも見えなくなれば、終わりなのだろうか。
「あ」
彼女が溢した声に、いつの間にか垂れていた頭を視線と共に持ち上げる。
目の前に見えたのは、微笑む彼女の横顔だった。