竜宮の御使い
砂糖を吐き出しそうな甘い言葉に些か疲れながら、私はツインズに質問をした。いいかげん、お互いの名前を知らないのは限界がある。それに、今自分が置かれている状況を正確に理解するべきだと思う。

「い、いや…。あの、失礼ですがあなた方はどなたでしょうか?そしてここはどこでしょう?」

龍神様は何も教えてくれなかった。ここはどこで、二人は何で、龍宮の御使いとは何なのか…私の中には疑問が溢れている。

「ああ…失礼。我らとした事が…とんだ失態だった。」

「そうですね。シエン。些か暴走してしまったようです。」

 二人は苦笑いをすると全く同じそぶりで目の前に跪いた。そして、銀髪の男が私の左手を取る。

「シオン・白龍と申します。」

次いで、藍色の髪の男が私の右手を取った。

「シエン・青龍と申す。」

「「ようこそ、龍の国へ。愛しい番よ。」」

そして、見事なハミングと共に私の手の甲に口づけた。
 ボボボボン!!!と口づけられたところから一気に熱が上がり、カーッと頭が顔が体中が熱くなる。

「私たちは名乗りました。次はあなたのお名前を教えて下さい。」

シオンとシエンの瞳に見つめられ、クラクラと軽いめまいを覚えながら、私はしっかりと意識を現実に戻した。
確か龍神様は私…梶彩乃はもう存在しないと言っていた。代わりに龍宮の使いとしてこの世界で生きろと…。

「龍宮の御使い・アヤノです。」

ゆっくりと言葉を紡ぎだす。新たな名前を口にした週間…本当に梶彩乃はもういなくなってしまったのだとどこか遠くの方で思った。

「「アヤノ…。」」

二つの声が絶妙なユニゾンで私の名前を呼んだ瞬間、ドクンっと鼓動が高鳴る。
…いったい…どうしたっていうの?私…何でこんなにドキドキするんだろう?確かにイケメンだけど、ツインズだからその効果も二倍だけど…。長い事異性に触れられても無いけれど。それでもこの胸の鼓動と高鳴りは異常な気がする。
まさか、出会ったばかりの二人に恋しちゃったとか?しかも二人同時に?…いやいやいやあり得ないでしょ?だってこんなイケメンが私を相手にするはずがない。きっとわたしが龍宮の御使いだからこんなにちやほやして居るだけだ。なにか龍宮の使いとしての役目が終わればもう、会う事も無くなるのだろう。
誰かが人の第一印象は八割が外見で決まるといっていた。きっとこのツインズも私を見てがっかりした事だろう。
龍宮の使いがどのような役目を持つのかわからないが、やっと現れた女はボロボロで瀕死の状態。5年もまって治癒して繭から引き揚げたのは、がっかりする様な大柄でおデブな女。
…龍神様、こんな風に異世界トリップさせてくれるならもちょっとチートを授けてくれてもよかったんじゃない?それに、加護ってなによ?今のところどこも変わってないじゃない。5年も眠っていたんだから少しくらい痩せててもいいでしょ?!体系も何もかも事故前に戻さなくても良かったのにぃ~!!
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