フリージアとアスチルベ



教室に入り、自分の席を確認する。

廊下側の前から3番目、廊下側の前から3番目...

忘れないように心のなかで唱えながら席に向かう。


あれ、ここだよね...?

その席には男の子が座っており、なにやら楽しそうに喋っている。


「あ、ごめん。
席借りてました。」

「あ、いや、大丈夫...です。」


話を中断させてしまい申し訳なくなる。

有り難く席につかせてもらい、携帯を開く。

【後ろの席が、弥咲ちゃんだったよ!】

仲良さそうに撮られた写真に、少し安堵する。


「ねえねえ、名前なんていうの?」

「え、私...?」


突然の声に思わず瞬きをする。


「うん。
せっかくだからさ、友達になろうよ。

あ、俺は井上 柊(イノウエシュウ)。」

「三井 那瑠です…」

「なる、って呼んでもいい?」

「あ、うん…」

「よっしゃ。
俺のことも名前で呼んでね。」

「わかった。
柊くん、よろしくね。」


少し馴れ馴れしい...いや、フレンドリーだなと思ったが、友達ができたことに少し安心した。


「那瑠ちゃん、私ともならない?」


そう話しかけてきてくれたのは、私の前に座っていた女の子。


「私は松山 理湖(マツヤマリコ)って言うんだけど…りこ、って呼んでほしいな。」

「理湖ちゃん…よろしくね。」

「こちらこそ!
お友だち出来てほっとしたよ。」

「私も。」


二人で笑い合うと、知らないおじさん先生が廊下に並ぶように指示する。


「あの人私たちの担任かな?」

「どうだろう、優しい感じするね。」


小さな声で話しながら、私たちは体育館に向かった。


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