美人はツラいよ

「私、カフェモカが大好きで。あの絶妙な甘さがいいんですよね。ああ、なんだか話してたら飲みたくなって来ちゃった。ちょうど、今から休憩するところなんですよ。」

その発言に、私は思わず彼女に手の中の紙袋を差し出しそうになる。
どうせ、私は今から課長の急ぎの仕事を片づけねばならない。
仕事しながらでも、カフェモカは飲めるとしても、スコーンは食べられない。
せっかくなら、美姫ちゃん食べる?
と言おうとして口を開きかけたところで、松田君と目が合った。
思わず息をのむような強い視線を向けられて、開きかけた口を再び噤む。
それを見届けて、彼は再びにこやかに笑って言った。

「萱島さん、ちょうどいいですね。頭を使うのには糖分補給が必要ですから。それ飲んで頑張って下さい。あと、また少し仕事をお願いしてもいいですか?申し訳ないですが、定時後に説明に来るので、スコーンでも食べて待っていていただけると助かります。」

さらりと私の行動を制するような発言に、この子は人の心の中が読めるんじゃないだろうかと妄想する。
彼は、私に「じゃあ、また後で」と軽く挨拶してから、美姫ちゃんを一瞥して「向かいのスタバ、今めちゃくちゃ混んでるよ」と、彼女のまるで欲していない情報を残して、立ち去った。

見事な塩対応…。
塩顔イケメンだけにね!
というギャグは全く笑えない。
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