美人はツラいよ

先ほどまでの楽しい会話を遮られた、左隣の男こと田上(たがみ)は、不機嫌そうな顔で呟いた。

「気づいたんなら黙って手伝ってやりゃいいのに。」

その理不尽な言い分に、私は思わず左隣を振り向いた。
聞き捨てならない一言である。
仕事は、担当ごとに責任を持ってこなすのが基本である。
本来なら、手伝ってあげるんだから褒められたっていいくらいだ。

「田上さんも、仕事してください。」

思わず、先輩に向かって冷たく言い放ってしまった。
この世の中、いくら実力主義といえど、実力が同じなら年功序列が基本だ。
一応敬語とはいえ、この言い方は良くなかった。

「おー、こわっ。ハイハイ、働きますよ。」
「すみません、今日は私も余裕がなくて。」

悪いと思ったので、一応謝っておく。
しかし、田上の不満はおさまらなかったらしい。

「何?イライラしてんの?でも、新人の可愛い女の子いじめて発散しちゃダメだよ。」
「別にいじめてませんよ、田上さん。」
「女子はこええな。萱島さんも、若い頃はキレイで可愛かったのに、年取ると後輩イビリとかするんだな。」
「だから、イビってなんていませんって。いい加減にしてください!!」

つい、声を荒げてしまってハッとする。
気が付けば、フロア全体からなま温かい視線を送られていた。
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