美人はツラいよ

「おー、こわっ。美姫ちゃんには、こんな風になって欲しくないな~。」

私が恥ずかしい視線を浴びたことでようやく機嫌が戻ったのか、田上が得意げに笑って「コーヒーでも買ってこよ」と席を立つ。
気まずそうに、パソコンの画面を見つめながら仕事をする美姫ちゃんに「美姫ちゃんの分も買ってくるね」と声を掛けた。


あー、マジでやってられない。
ムカつくわー、本当にムカつく!!

声に出したところで、状況がよくなるわけじゃない。
忙しないオフィスで、アラサーお局女子の悪態に耳を傾けてくれる人など皆無だ。

数分後、帰ってきた田上の手には缶コーヒーが二つ。
もちろん、私の分はない。

最後にコーヒーをごちそうしてもらったのは、いつだろう?

そんな業務には一切関係のない疑問が浮かんだのを最後に、時計の針が12時を指すまで、私はただひたすらに目の前の伝票処理に集中した。
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