美人はツラいよ
そんなわけで、今日も仕事は適当に終わらせて、私は今話題のワインバーに来ていた。
連れてきてくれたのは、上司の田上さんだ。
田上さんは、萱島さんより三つ年上の34歳。去年、ようやく主任に昇格した彼は (うちの会社は経理部門の役職ポストが極端に少なく他部署に比べて昇進ペースが遅いのだ) 、一言で表せば物腰の柔らかいインテリメガネ男。メガネと服装には気を遣っていて実年齢より若く見えるが、メガネを外した素顔は私と同じ平凡顔だ。
物腰が柔らかいはずの彼も、男のメンツが絡むと話は別らしく。
仕事熱心な萱島さんをライバル視していたのか、彼女だけにはやたらと攻撃的だった。
それも、今年度、田上さんが主任になったことで無事に解消されて。
今では、二人ニコニコ笑いながら、互いを褒め合っている。
「さすが、萱島さん、仕事が早いね~。」
「いえいえ、このくらいは当たり前ですよ。主任ならあっという間に終わってたんじゃないですか?」
「そうかもしれないけど、主任になると色々雑用も増えてね。困るよ。」
「それは、大変ですね。いつでも代わって差し上げたいくらいです。」
「やっぱり萱島さんは頼りになるよね。長い間経験を積んだだけのことはある!」
「それを言うなら主任こそ、私より長い間こちらにいらっしゃるじゃないですか~」
…時々、辛辣な嫌味の応酬に聞こえなくもないけれど、以前と比べれば概ね関係は良好だ。