美人はツラいよ
そんな田上さんには、入社したての頃から、よく食事に誘われた。
明らかに下心がありそうな誘いだったが、実際に行ってみれば、強引に迫られるようなこともなく、ただ単に若い子と飲みたいだけという感じで、安心した。
いつも誘われるのは、話題のお店だけど、30代の男の人が一人で入るには少し抵抗があるような小洒落たお店が多くて。
要するに、私は田上さんがそういう店に行くための「若い女の子のツレ」というアイテムみたいなものなのだろう。
私は私で、おいしいご飯が食べられるし、食費は浮くし(もちろん全額田上さんのおごりだ)、特に何も要求されない、というメリットだらけのお誘いを、いつも断ることは無かった。
そんな関係を二年も続ければ、お互いに良い意味で馴れ合いが生じるものだ。
田上さんも私も、二人でご飯を食べながら、仕事の愚痴を言ったり、くだらない過去の失敗談で盛り上がったりするようになり。
挙げ句の果てには、私は合コンの反省やら恋愛の相談までするようになっていて、先輩と後輩、上司と部下いうよりは、まるで歳の離れた兄と妹のような関係だった。
田上さんと出かける日は。
合コンの日よりも化粧直しに時間を掛けなくていいし。
男受けを気にせずに、ワードロープの中で一番気に入っている服を選ぶ。
もちろん、料理を甲斐甲斐しく取り分けたりもしない。
まさに、私にとっては、
居心地のいい関係、そのものだった。