エリート同期は意地悪がお好き
たくさんのギャラリーに見られ、ナンパ男は顔を真っ赤にして走り去った。

大きな溜息をついた私は、助け人を見上げ、お礼を言う。

「…あの、ありがとうございました。助かりました」
「…いいえ、でも、もう少し気をつけたほうがいいですよ」

…背の高い助け人が私を見下ろして、初めて顔が見えた。…この人。

「…貴方は、会社で」
「…え?……あ、君、TOJOUで、会った」

…謎のイケメン。…なんて、偶然なんだろう。

「…あ、あの、これ」
「…え、…これは」

謎のイケメンが落としたハンカチを差し出した。ちょっと驚いてそれを受け取ると、ニッコリ微笑んだ。

「…ありがとうございます。使おうと思ったら、どこかで落としてしまってたみたいで、貴女が拾ってくれてたんですね」

「…良かったです。渡せて…どこの部署の方かわからなかったので」

そう言って微笑むと、謎のイケメンはクスッと笑った。

「…残念ながら、私はTOJOUの社員ではありません」

「…え?」

「…それより、自宅までお送りしましょう。また、良からぬ輩に捕まりそうで心配です」

そう言うなり、私の手をつかむと、駅の外に向かって歩き出す。大丈夫だと言っても聞いてくれず、…車の前で足を止めた私達の前に、一台の高級車。

「…おかえりなさいませ、黒澤社長」

…私は耳を疑った。
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