エリート同期は意地悪がお好き
私の手を引いて、司は特に何を言うでもなく、街中を抜けて行く。

「途中で、ファミレスでも寄って帰ろう」
「…お腹減ってない」

「…腹が減っては戦はできぬ」
「…何それ」

突然口を開いたかと思えば、そんな事を言われ、暗い顔が少しだけ笑みに変わる。

チラッと私を見た司は、満足そうに笑みを浮かべるとまた歩き出す。

そして、宣言通り、ファミレスにより、食事をした私達は家に帰った。

家に帰ると、いつものように私を先にお風呂に促し、次に司が入る。この当たり前の日常が、病んだ心を癒してくれる。

そしてまた、髪を乾かしていると当たり前のようにドライヤーを奪った司は、私の髪を乾かしていく。

幸せを噛み締めながら目を瞑ると、何時迄も我慢していた涙が頬を伝った。

「…はい、終わり」
「…ありが、と」

泣いてる私に気づいたのか、司が私を自分の方に向かせ、優しく抱きしめた。
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