遥か~新選組桜華伝~


「土方さんらしいですね」


素っ気無い振りして、誰より隊士のことを考えてる。


わかりづらいんだよ……。


土方さんの優しさは。


「了解しました。届けてきます」


近藤さんに一礼すると、私は枝を手に、副長室へ向かった。


中庭の見える縁側を、小走りしていると。


「よお」


「土方さん……!」


澄ました顔で見下ろしてくる、土方さんがいた。


「おまえ、そんなに急いでどうしたんだ」


そう言いながらも、視線は桜の枝に注がれていて、口元を少しだけ緩ませている。


わかってるくせに……。


ほんと素直じゃないんだから……。


「桜の枝を届けにきました」


土方さんは枝を手に取ると、顔の前で花びらを見つめる。


「ありがとな。
玄関にでも飾っておくよ」


そう言って、私の横を通り越していく。


< 156 / 276 >

この作品をシェア

pagetop