遥か~新選組桜華伝~
「遥空との契約でテメェの命を預かってんだ。
わざわざ危険なことをさせるわけねえだろ」
刀越しに土方さんの冷酷な瞳が見えた。
ううん、違う。
遠ざけられたんじゃない。
距離が縮んだなんて、私が勝手に勘違いしていたんだ……。
土方さんの言うとおり…私は新選組の隊士じゃない。
遥空が知る新選組の機密を漏らさない条件として、ここに置かれているだけなんだ。
身寄りのないこの時代に居場所をくれただけ、新選組には感謝しなければならない。
けれど……。
「私だって…役に立ちたいんです」
震える声で言って顔を上げる。
「土方さん…遥空から、未来に帰る方法を聞いてやるって言ってくれましたよね?」
「あぁ」
土方さんは顔色ひとつ変えずに頷いた。
「私…嬉しかったんです。
未来から来たなんて、誰にも信じてもらえないって思ってたから…」
「そりゃ、桜華石の力をこの目で見たからな。
信じざるを得ない」
「それでも…嬉しかったんです」
「……」
繰り返すと、土方さんは何も言わずにじっと見つめてくる。