焦れ甘な恋が始まりました
 


「……ん、」



――――それから、どれくらい唇を重ねていたかはわからない。


余韻を惜しむように、どちらともなく離された唇に寂しさを感じて下條さんを見上げれば、チュッ、と啄むようなキスを落とされ、それを合図に今度こそ唇が離れていった。



「……そんな顔されると、今すぐ全部、奪いたくなるな」


「あ、あの……」


「っていうか、もう俺には引く理由がなくなったから。申し訳ないけど……今は、かなり上機嫌」


「っ!」


「“いただきます”を言い忘れて今更だけど、ごちそうさま」



ニッコリと。

言葉通り満足そうに笑った下條さんは、今度は楽しそうに私の額(ひたい)に口付けた。


な、な、何、これ……

っていうか私も、流されるがまま流されて、とんでもないことを社長としてしまったけれど、改めて考えると本当にとんでもないことを……


 
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